猫を起こさないように
大脱出
大脱出

大脱出


大脱出


大物アクションスター二人による、超豪華学芸会。筋肉にモノをいわせない理性的でほっそりしたシュワちゃんと、相変わらず口をへの字に曲げて下唇をつきだす演技しかできないスタローン。この二人が刑務所という閉鎖空間で、アクションによらない演技対決を行うというのだから、未視聴の向きにもどんな内容かは容易に想像できるだろう。この大物二人を配した時点で当たり前のことだが、脇役はまさに脇役としてしか存在できず、刑務所ものを面白くする魅力的なサブキャラクターにはわずかの尺を割く余地すらない。映画として面白くなる要素はあらかじめ徹底的に排除されており、まさに脱出不可能の絶望である。かろうじて想像できるのは現場スタッフに漂う異様な緊張感と、本邦で例えるなら渡哲也と高倉健の共演を実現させた監督の大はしゃぎだけだ。逃げられないのはついうっかり映画館に入ってしまった観客であり、映画の終了による閉鎖空間からの脱出をひたすら待つしかない。映画の進行と観客の状況をメタにリンクさせたなら凄まじい脚本と演出だが、私には二人の上腕二頭筋に触りまくる大はしゃぎの監督しか見えない。