猫を起こさないように
小鳥猊下慈愛のようす
小鳥猊下慈愛のようす

小鳥猊下慈愛のようす

 「(小太りの男が贅肉に気管を圧迫された声で)ど、どういうことですか、説明してください。ぼくは確かにテキストサイトの寵児だったはずです。それがどうして、こんなひどいアクセス数に……」
 「(小太りの女、ボンレスハムにかけた紐を想起させるアイパッチで)アンタがホームページを開設してから14年経ってるってことよ。もうこの世界はね、アクセス数の寡多なんかに構ってらんないのよ」
 「(小太りの男、高ぶる感情にフーフー言いながら)そんなの嘘だ! あれから14年も経ったのなら、『猫を起こさないように』はとっくに百万ヒットを達成しているはずですよ! それがなんで……いや、確かにボクは百万ヒットを達成したんだ! 達成したんですよ!」
 「(入道雲状のパーマ先端部へひっかかったキャップのつばを触りながら)小鳥さん……でいいのよね? 冷静に聞いて。nWoはね、もはやかつてのような人気サイトではなくなっているのよ。いえ、それどころか、個人の発信を促すツールとしてのホームページは、今や」
 「(小太り男、聞き取りにくい早口で)もういいよ……nWoファンのみんな、ここだ! (叫びに呼応して四方の壁が内向きに破裂し、くす玉の中身を思わせる色とりどりの紙片が噴出する。小太りの男、満面の笑みで)年末恒例全レス祭り、『小鳥猊下慈愛のようす』はっじめっるよー!」