猫を起こさないように
エスター
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小生が本作を視聴したのは、キナくさい思想統制社会到来の足音に少女方面での需要を煽られたゆえだが、結果として大当たりだった。良質なホラー映画の特徴は、表面的な残酷さではなく、あらゆる人間の無意識に刻まれた普遍的な恐怖へ肉薄する点にある。例えば以前取り上げた「ホステル」では、コミュニケーションが欠落した瞬間に異物と化す他者への恐怖を描いている。直截な殺人の描写は一種のフレイバーでしかない。本作では、娘に対して母親が潜在的に抱く恐れが描かれている。すなわち、「女としての娘」だ。該当する婦女子にとって無意識へじかに手をつっこまれるような体験となるはずであり、これは忠告だが、本作を視聴させるときには万全の注意を払うべきだ。そして、児童に銃を持たせたり、児童を半殺しにしたり、児童にポルノすれすれの行為をさせたりしながらも、物語はきわどいことろで多くの人々が許容できる社会性の範疇へ着地している。極端な描写を自己目的化し、指摘されると過激化する例の方々にはぜひ見習っていただきたい。あと、ホラーの文法で撮影するとどんな日常もホラーになることがわかった。公園のシーンなんかほとんど笑えるくらい。